砂丘あれこれ
砂丘と聞いて真っ先に思い浮かぶのは?
「砂丘」と聞いて真っ先にどこが思い浮かぶでしょうか?
鳥取砂丘という人が多いのではないでしょうか。

日本海に面した東京ドーム約117個分の砂丘。
南北2.4㎞、東西16㎞、高低差は一番大きい所で90mにもなる堂々としていて、時としてオアシスも出現し日本離れした風景を目にすることができる場所。

鳥取県が誇るすなば。
「鳥取砂丘」には多くの観光客も訪れ、有名さでいったらダントツ日本一でしょう。


昼間の砂丘の姿も良いですが、人っ子一人いない深夜は、別の惑星に降り立ったような錯覚にも陥るほど。遠くには光る漁火も綺麗です。


風の姿もはっきりと砂に刻まれていて、思わず自分でも足跡をつけたくなりますよね。
中田島砂丘
静岡県にも遠州灘に面した東京ドーム約21個分の中田島砂丘(なかたじまさきゅう)があります。
南北0.6km、東西4㎞に渡って広がりアクセスの良さで手軽に楽しめる砂丘。(参考:遠州大砂丘)


では、日本一の砂丘はどこでしょう?
青森県下北半島の東通村にある「猿ヶ森砂丘」です。
その広さは、なんと鳥取砂丘の約3倍!東京ドーム362個の面積。
北側の尻労(しつかり)から南側の小田野沢までの約17㎞の海岸線に広がっています。
※「しつかり」とは、アイヌ語で(Sir Tukari)、山の手前という意味。最果ての行き止まりと言ったところでしょうか。
日本一の砂丘なのに知られていない理由
知名度が低いのは、砂丘の大部分が防衛装備庁の下北試験場(弾道試験場)の敷地になっているため一般人の立ち入りが一切不可能だからです。
情報収集:東通村役場
日本一なのに立ち入れないと聞くと、どうしても見てみたい、駄目ならせめて傍まで行ってみたいと思うのが人の性。
情報を仕入れる為、まずは東通村役場にTEL。
電話に出た担当の方はとても親切な方で、「防衛上の施設なので見られないんですよね」と。ここがもし防衛省の管轄になっていなければ、有名な観光地になっていたことでしょう。
担当者は続けて「砂丘というような丘にはなっていませんが、そこに続く砂浜には行けます」と若干申し訳なさそうになりながらも、「その砂浜に立ち、この先に日本一の大砂丘があるんだ~と想像して頂くことはできます」と浪漫たっぷりな返答。
でも、その方も行ったことはないそうです。(笑)
情報収集:防衛省
次に電話したのは防衛省。
施設見学会など合法的に中に入って見る機会がないものなのか尋ねる為です。
延々保留音を楽しんだ後、「こちらではわかりかねるので、直接施設に電話して聞いてください」と下北試験場の電話番号を教えて貰いました。
そして防衛装備庁下北試験場に直接電話です。
電話口の方は超淡々としていて、きっと「よくわからないメンドーな電話だな」と思っていたことでしょう。施設見学とかないのか尋ねたところ「ここは試験場なのでありません。今後もそういった予定は一切ありません」とほのかな希望の光も消灯です。
日本の防衛を支える弾薬試験や射撃実験を行っている重要な施設ですから当然ですよね。
そして決定的な一言です。
「先ほどから猿ヶ森砂丘と言われておりますが、そもそもこちらでは、猿ヶ森砂丘という認識は一切ありません、試験場です」。
周りの人達が猿ヶ森砂丘って、実は日本一の大砂丘だぜ!と思っていても、管轄の当事者は「そもそもそんな砂丘なんて存在しない」っていうスタンスです。
まさに幻の砂丘。
実際に行ってみた!
それでも東通村役場の方に教えて頂いた、尻労側の海岸に行って「猿ヶ森砂丘」に思いを馳せてみました。

尻労の海岸へ続く道を歩いていくと。

とっても綺麗な砂浜と海、空にはプカプカと雲が浮かんでおりました。

ユーラスウインドパークの風車が見えます。

尻労の漁港は真ん中に見える岬の向こう側にあります。
ほんとに山の手前の行き止まり感ありますね。

そしてこの海岸をずっとずっと先が日本一の大砂丘「猿ヶ森砂丘」です。単なる砂浜ですが、この先には・・・と思いを馳せると、確かに浪漫を感じます。
見られるのは単なる「浜」ですが、空も海も砂浜もとっても綺麗で人も全くいませんでした。
わざわざ行くほどではありませんが、下北半島にドライブした際には立ち寄って「幻の砂丘浪漫」に浸るのも一計です。
【2015年10月10日訪問】
風のまにまに
あの日、俺たちは砂丘へと続く砂浜に立っていた。
「なあ、風って、どこから来てどこへ行くんだろうな」
風来坊の潤が、砂を蹴って笑う。
「決まってないからいいんじゃね?」
俺はそう返して、並んで空を見上げた。鳥取の空はどこまでも青くて、雲はどこまでも自由だった。
潤とは大学のときからの腐れ縁。旅好きで気ままで、気づけばどこかへ消えて、でも忘れた頃に連絡をよこす。
「そろそろ、またどっか行くんだろ」
「ん、まあな。次は南の島にでも逃げるか」
風が二人の間を吹き抜ける。砂に刻んだ足跡が、すぐに風に消されていくのを、ただ見ていた。
「また会おうぜ、風のまにまに」
俺たちは握手も交わさず、ただ肩を並べて笑った。
友情ってのは、言葉がなくても、消えないものだと思う。
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