
駒つなぎの桜は、昼神温泉・日本一の星空・花桃で有名な長野県下伊那郡阿智村にあります。
旧東山道沿いの水田に寄り添うように佇み、その昔、源義経が奥州へ下る際に馬をつないだとされるエドヒガンの古木です。樹齢約450年。例年の見頃は4月中旬~下旬。夜にはライトアップ有。
エドヒガンの古木は、羽を広げた鳳凰のようにも見えますよね。駒つなぎの桜は水辺から鳳凰が堂々と飛び立つような姿にも見える山間の一本桜です。
満開時には多くのカメラマンが所狭しと三脚を立ててファインダーを覗いています。


駒つなぎの桜(一本桜)
水に映る思い出
山間の小さな水田に、駒つなぎの桜が咲いた。
田に張った水は、満開の桜を静かに映し出している。
逆さに揺れる花の影は、どこか懐かしい幻のようだった。
駐車場から歩いてきた道をひとり振り返る。
あの春、あの人と手を取り合って登った坂道。
柔らかな笑顔も、照れたような声も、春風に乗って耳元にかすかに蘇る。
田んぼに映る桜を見つめる。
その水面には、今はもう届かない思い出も、そっと浮かんでいる気がした。
肩を並べ、笑い合ったあの日の二人が、そこにいた。
風が吹き、映る桜がわずかに揺れた。
揺れるたびに、懐かしさが胸を締めつける。
けれど、涙は落とさない。
思い出は悲しみではなく、今も優しく私を生かしてくれるから。
そっと手を伸ばし、水面に触れる。
波紋が広がり、桜も、あの人の面影も、春の光の中に溶けていった。
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