山梨県北杜市・実相寺の境内に立つ「山高神代桜」は、ヤマトタケル(日本武尊)のお手植えの桜と言い伝えられている推定樹齢二千年のエドヒガンの古木。
鎌倉時代に日蓮聖人が桜の衰えを見て憂い樹勢回復を祈願されたところ再生したとして「妙法桜」とも呼ばれている。
1922年(大正11年)10月12日に「三春滝ザクラ」(福島県三春町)、「根尾谷淡墨ザクラ」(岐阜県本巣市)、「石戸蒲ザクラ」(埼玉県北本市)、「狩宿の下馬ザクラ」(静岡県富士宮市)とともに「山高神代ザクラ」として国の天然記念物に指定されている一本桜です。
日本三大桜(三春滝桜・根尾谷淡墨桜と並ぶ)、日本五大桜(三大桜に石戸蒲ザクラ・狩宿の下馬ザクラを加えたもの)の一つとして数えられ、国の天然記念物に指定されています。悠久の時を超えて生き続ける姿は、まさに「日本最古の桜」と呼ぶにふさわしい荘厳さ。
実相寺自体は変わった歴史を持つお寺で、創建年不明ながら当初は真言宗のお寺であったが、1375年(天授元年)に日蓮宗の實相院日應(じっそういんにちおう)が、当時の住職真理法印を論破し、寺を譲り受けて日蓮宗に改宗して実相寺になった。
神代桜が樹齢二千年と考えると、境内には既に立派な姿の神代桜があったことになり、桜はつぶさにその様子を見てきたのでしょうね。
余談ですが、実相寺の公式サイト「神代桜略年表」を含め神代桜を紹介している一部に「国の天然記念物第一号」と記載されたものもあります。しかし、実際には天然記念物に「第何号」という制度上の区分は存在せず、神代桜も他の五大桜と同じく1922年10月12日に同時指定を受けた一例に過ぎません。
ちなみに、国の天然記念物に最初に指定されたのは、埼玉県さいたま市の「田島ヶ原サクラソウ自生地」を含め複数あり、五大桜が指定されるより前の1920年(大正9年)7月17日に指定されています。
山高神代桜
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 山高神代桜(やまたか じんだいざくら) |
桜の種類 | エドヒガン |
推定樹齢 | 2000年 |
オススメ度(5段階) | ★★★★★ |
一言 | 日本最古の桜 |
例年の見頃 | 4月上旬 |
撮影日 | 2015年4月5日(直近の撮影日) |
所在地 | 山梨県北杜市武川町山高2763 |
アクセス | 中央自動車道 須玉ICから約8km 15分 |
駐車場/トイレ | 駐車場無(近隣に臨時駐車場有)・トイレ有 |
その他 | ・拝観料(2025年~桜の期間限定) 一般500円/市民300円(要身分証) /中学生以下無料 拝観時間8:30~17:00 ・ライトアップ無 |
参考URL | 大津山 実相寺(實相寺) |

2004年4月に撮影した際には、樹勢回復工事のため桜の幹を覆うように櫓(屋根)がついていました。遠めには、傘を被っているように見えました。曇り空の夕方だったので人も少なめでしたがひっきりなしに人が訪れる。


2006年4月に撮影。

2015年4月
神代に咲く
私はここに立っている。
甲斐の地で里に根を下ろし幾千の春を迎えた。
まだこの国に“日本”という名すらなかった頃から。
ある時には旅の僧が杖をつき、私の足元で祈りを捧げ樹勢回復を願った。
戦の時代のある時には、若い男、武田何某という者がこの地に来た。
目に力を宿し、「これからの未来を照らしたい」と言った。
私は風にゆれる花びらで応えた。
鎧をまとった者たちが傷を癒し、子を失った母が、私の幹に額をあてて泣いた。
私はただ、花を咲かせてきた。
誰のためでもなく、時の流れに逆らうでもなく、
空に向かって枝を伸ばし、春が来れば、静かに咲いた。
時が流れ、村ができ町になり、やがて電線が張られ、舗装された道に車が走るようになっても、
私はここに立っている。
今では、「最古の桜」と呼ばれるようになったが、
私にとっては、今年もまた誰かが私を見上げ、
誰かが手を合わせ、誰かが涙を流す、その瞬間がすべてだ。
咲くことは、祈ること。
そして私は、これからも咲き続ける。
人の心に春が来る限り。
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