根尾谷薄墨とは
岐阜県本巣市根尾に咲く「根尾谷淡墨桜」は、第26代継体天皇が植えたと伝わり、1922年(大正11年)10月12日に「三春滝ザクラ」(福島県三春町)、「山高神代桜」(山梨県北杜市)、「石戸蒲ザクラ」(埼玉県北本市)、「狩宿の下馬ザクラ」(静岡県富士宮市)とともに「根尾谷淡墨ザクラ」として国の天然記念物に指定されている一本桜です。
日本三大桜(山高神代桜・三春滝桜と並ぶ)、日本五大桜(三大桜に石戸蒲ザクラ・狩宿の下馬ザクラを加えたもの)の一つとして数えられています。
蕾のころは淡いピンク色。満開になると白く咲き、散り際には淡い墨色を帯びる。
その移ろいから、「淡墨桜」と呼ばれるようになったとされています。春の光の中で白く輝く姿も美しいですが、散り際に見せる薄墨色の気配こそ、この桜の名にふさわしい静かな美しさなのかもしれません。
根尾谷薄墨桜基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
名称 | 根尾谷薄墨桜(ねおだに うすずみざくら) |
桜の種類 | エドヒガン |
| 推定樹齢 | 1500余年 |
オススメ度(5段階) | ★★★★★ |
一言 | 蕾は薄いピンク、満開に白色、散りぎわには淡い墨色になる可憐な桜 |
例年の見頃 | 3月下旬~4月上旬 |
撮影日 | 2005年4月16日 |
所在地 | 岐阜県本巣市根尾板所字上段995 |
アクセス | 樽見鉄道 樽見駅から 徒歩約15分 東海環状自動車道 本巣ICから 車で約30分/東海環状自動車道 大野神戸ICから 車で約40分 |
駐車場/トイレ | 駐車場有(桜シーズン500円)・トイレ有 |
その他 | ・ライトアップ有 18:40~21:00 |
参考URL | 本巣市 薄墨桜 |

フィルム:フジクローム Velviaにて撮影
私が訪れたのは、まだ明け方にもならない真っ暗な時間だったので夜桜を楽しみます。この時間でも何人も撮影している方はいました。

明るい時間になると淡い色合いがはっきりと見えてきました。たくさんの添え木が巨木を物語っています。

フィルム:フジクローム Velviaにて撮影
どっしりとした幹回り、この桜も何度か枯死の危機を迎えたが専門家により樹勢回復が成長して今に至る。長い長い歴史を紡ぎ続けている桜は浪漫がありますよね。



7:00を過ぎる頃からはたくさんの人で賑わいはじめます。
この桜も一見の価値がある桜なので、ぜひ皆さんも実際に目にすることをお勧めします。
薄墨にほどける朝
鳥の声がした。
遠くで、人の話し声がかすかに聞こえた。
冷たかった空気が、少しずつ春の温度に変わっていく。
さっきまで夜明け前だった世界が、音もなくほどけていく。
薄い光がにじみはじめた空の下で、根尾谷淡墨桜は静かに立っていた。
千五百年の時を越えてきたといわれる古木。
大きく枝を広げながらも、支えられ、傷を抱え、それでも白い花を咲かせている。
その花の奥に、ほんのわずかな影のような色が宿っている気がした。
薄墨色。
それは、暗さではなかった。
終わりの色でもなかった。
長い時間を生きてきたものだけが持つ、やさしい余白のような色だった。
桜は変わらず、そこに立っていた。
けれど、自分の中では何かが変わっていた。
大きな決意ではない。
劇的な答えでもない。
ただ、今日を少しだけ丁寧に生きてみようと思った。
硬くなっていた心を、少しだけゆるめてみよう。
急ぎすぎていた歩幅を、少しだけ戻してみよう。
まだ間に合うものが、きっとある。
根尾谷淡墨桜の下に立つ朝は、驚くほど静かだった。
けれどその静けさの中で、眠っていた何かが確かに目を覚ました。
春は、華やかに訪れるものだと思っていた。
でも本当は、こんなふうに訪れるのかもしれない。
古い桜の枝先に、白い花がひらくように。
冷たい朝の空気が、少しずつやわらいでいくように。
薄墨色の空が、光にほどけていくように。
見上げると、淡墨桜は朝の光の中で咲いていた。
千五百年の時を越えて。
それでも、まるで今日が初めての春であるかのように。

