日本三大モグラ駅とは?
| 駅名 | 路線 | 地表・駅舎からの深さ | ホームの標高 |
| 土合駅(群馬県) | JR上越線 | 約70m | 約583m |
| 筒石駅(新潟県) | えちごトキめき鉄道 | 約40m | 約20m |
| 美佐島駅(新潟県) | 北越急行ほくほく線 | 約10m | 約187m |
土合駅|日本一のモグラ駅
群馬県みなかみ町、谷川岳の麓にあるJR上越線の土合(どあい)駅。
地上の駅舎から約70m下にホームがあることから、「日本一のモグラ駅」と呼ばれています。

一見すると山小屋かスキー場かな?なんて思ってしまいますが、豪雪地帯らしい急勾配の三角屋根が特徴の土合駅の駅舎。
目の前には砂利の駐車スペースがあり、山間のマイナーな駅にしては、何台もの車が停まっていました。

昔ながらの雰囲気を残す駅舎の入口には「ようこそ日本一のモグラえき土合へ」という年季の入った看板がお出迎え。

駅舎の中へ入ってみると、ホームへの案内が目に飛び込んできます。
どれどれ、何気なく読むと、下りホームまでは486段の階段があり、所要時間は約10分とのこと。
486段……10分。
普通の駅では、まず見かけない案内です。
地上と地下に分かれたホーム
実は土合駅、上りと下りでホームの場所がまるで違います。


上りホームは、山々に囲まれた雰囲気のいたって普通の地上駅。鳥のさえずりが聞こえるのどかな駅。
一方、下りホームは新清水トンネルの中にあります。
これは1960年代、単線だった上越線を複線化する際、新たに造られた新清水トンネルに下り線を通したため、一つの駅なのに、地上と地下というまったく違う趣となっています。
地下ホームへ続く462段の大階段
地下ホームへ向かってみます。

長い通路を、あえてモノクロにしてみました。
窓から差し込む光と影、奥へ続く通路。まだ階段に着いていないのに、すでに普通の駅とは違う雰囲気です。
ちなみにこの通路は、外から見ると国道291号の上を通って山中に向かって渡り廊下のように伸びています。

目の前に不思議な壁が現れます。
なんですかなこの壁は?と思いましたが。

通り過ぎて振り返って気づいたのですが、出入り口の前を塞ぐように佇む壁は、列車の往来時に地下から吹き上がってくる風を遮るため風よけのようです。

そして、通路の先に現れるのがこちら。
地底まで延々とどこまでも続く階段。これ、駅のホームへ行く絵面ではないですよね。
冷静に考えて帰りはこれを上ってこなければならないんですよね。
週末に訪れたので、この駅目当ての観光客は常にいる状態でした。駅前の砂利の駐車場に車が何台も停まっていたのは納得です。
見た目は無機質ですが、人の気配があるので寂しい雰囲気とは違った感じでした。
トンネルの中にある下りホーム

長い階段を降りた先には、トンネル内に設けられた下りホームが現れます。
駅舎からここまでの道のりを考えると、同じ駅とは思えないほどの距離感とまさに地底感。
ちなみに、この地下空間の低温環境を利用した、少し変わった試みも行われていました。

なんと、旧駅務室でビールを熟成させるというもの。
年間を通して15℃前後の気温が貯蔵に適した環境なので、ここでできたビールは「モグラ熟成ビール」と言われています。
地下ホームにも、意外な使い道があるようです。
462段上りきった先には

さて地上へ戻ります。
ご丁寧に一段一段に番号が振ってあります。

そして、462段を上りきったところには、こんな案内が待っています。
「お疲れさまでした」
しかし、その下には「改札出口まであと24段あります」との文字。
わかっているとは言え、最後までなかなか手厳しい駅です。(笑)
喫茶モグラでひと休み
土合駅にはこれまで2度訪れていますが、2026年の再訪では、駅舎内にある「喫茶モグラ」にも立ち寄りました。

古い駅舎の雰囲気を生かした喫茶モグラ。
昔ながらの建物、壁には駅名標の「どあい」に木製のカウンターや温かな照明がよく似合います。

美味しそうなメニューが並んでいます。

「ハンドドリップコーヒー」に「谷川茸サンド」。
カップは横に読んでも縦に読んでもモグラという、モグラカップでした。
地下のコンクリートに囲まれた世界から戻って、駅舎でのんびりお茶を楽しむ。
階段を上った後のひと休みには、ちょうどよい場所でした。
【2026年4月最新訪問】
筒石駅|モグラ迷路駅
続いては、新潟県糸魚川市にある筒石(つついし)駅。
現在はえちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインに属していますが、かつてはJR北陸本線の駅でした。
この駅の特徴は、地下約40mという土合駅ほどの深さではありませんが、それ以上に入り組んだ地下通路に趣があります。

地上にあるのは、こぢんまりとした駅舎。
土合駅と比べると仮の駅舎のような見栄えですが、中へ入ると雰囲気が一変します。
地下へ降りても、ホームはまだ遠い

駅舎から入って振り返ると、こちらも風よけがありますが、土合駅とは少し違った形です。
そして、いよいよ地下へ。

アーチ状の天井、コンクリートの壁、奥まで続く照明。
トンネルの大きさも土合駅に比べるとこじんまりしています。
土合駅も長い階段が印象的でしたが、筒石駅はそれだけではありません。

階段を降りると通路があり、そこからさらにホームへ向かう道が分かれます。
上りのホームと下りのホームが分かれているので、トンネル内の通路も二手に分かれています。
案内板があるので迷うわけではありませんが、私が訪れた時は人気も皆無、少し靄っている雰囲気もあってまるで地下迷路を歩いているようでした。

さらに階段を降りて、ようやくホームの近くへ。
ここまで来ると、地上の小さな駅舎がずいぶん遠く感じられます。
なぜ地下迷路のような駅になったのか
筒石駅は1912年に開業しましたが、最初から地下駅だったわけではありません。
1969年、北陸本線の複線電化に伴う線路の付け替えで、現在の頸城(くびき)トンネル内へ移転しました。
トンネル内の限られた空間にホームを設けたため、上下線のホームは互い違いの位置に配置されています。
地上の駅舎から階段を降り、地下通路を経由し、さらに目的のホームへ向かう。
この構造こそ、筒石駅を「モグラ迷路駅」と呼びたくなる理由です。
トンネルの中の待合室とホーム

地下にはベンチを備えた待合スペースがあり、扉の向こうがホームになっています。
無機質に椅子が並んで扉が見える雰囲気が、とても駅の待合室には思えない。

「運転士に向けたストロボ撮影禁止」と「通過列車時のホーム立入禁止」との注意書き。左にもストロボ禁止の張り紙がされているので、かなり多かったんでしょうね。
あくまでも禁止を促す注意書きで、物理的にはホームへ出ることができてしまう作りでした。

トンネル内に設けられた筒石駅のホームは、それぞれ少しずれた位置にあります。

丁度列車が入ってきましたが、乗降客はいませんでした。
一つ一つは鉄道駅に必要な設備ですが、そのすべてが地下のトンネルでつながっている光景は、なかなか独特です。
土合駅が階段の迫力なら、筒石駅は地下空間そのものを歩く面白さ。
同じモグラ駅でも、ずいぶん印象が違います。
美佐島駅|鉄壁の防風扉駅
三大モグラ駅の最後は、新潟県十日町市にある北越急行ほくほく線の美佐島(みさしま)駅。
1997年のほくほく線開業とともに誕生した駅で、赤倉トンネルの中、地下約10mにホームがあります。
3駅の中では最も浅い駅ですが、個性では決して負けていません。

手入れされたお花に囲まれた可愛らしい駅舎。
のどかな山間の駅なのに線路も踏切もホームもなく、背後の建物「旧津池変電所」が少々威圧感。
ところが、その地下には少々物々しい設備が待ち構えています。
地下に現れる謎の自動ドア

駅舎に入ると不思議な階段が目に飛び込んできます。
左の壁面には北越急行のマスコット「ホックン」が少し寂しそうにこちらを見ています。
そして階段を降りていくと、まず現れるのがこちら。

何やら頑丈そうな自動ドア。
しかも、「ホーム扉が開いている時は開きません」という注意書きまであります。
普通の駅にはない仕組みです。
一体全体ここには何があるのでしょうか??
まるで開け放つと亜空間から次々と魔物が飛び出すからやめてね、と言わんばかりです。(笑)

画像の右の扉が階段から降りてきた扉です。
階段と駅との間のスペースで、左が待合室と書かれていますが、施錠されて使えなくなっていました。
振り返るとホームへの扉があります。

こちらも、いかにも頑丈そうな造りです。
一体なぜ、地下10mほどの駅に、これほど厳重な2枚の扉が必要なのでしょうか。
時速160kmの特急が生んだ鉄壁の防風扉
かつて、ほくほく線には特急「はくたか」が走っていました。
最高速度は時速160km。在来線としては驚異的な韋駄天の速さです。
美佐島駅は狭いトンネル内にあるため、列車が高速で通過すると猛烈な風圧が発生します。
そこで乗客を守るために設けられたのが、二重の防風自動ドア。
待合スペースとホーム、待合スペースと階段を隔てる2枚の扉は、同時に開かない構造になっています。
「はくたか」が走らなくなった現在も、この設備は残されています。
筒石駅ではホームに出ることができましたが、ここ美佐島駅は物理的にも出られない仕組みになっていました。
列車が到着しましたので御乗車下さい

電光案内板は、普段は上段が点灯していますが、電車が到着して電車のドアが開くのと同時に下段の「電車が到着しましたので御乗車下さい」が点灯します。
普通の駅では当たり前のように立てるホームですが、美佐島駅では列車の到着に合わせて扉が開きます。

そして、トンネル内のホームに停車する普通列車。
この駅の面白さは、写真だけではなかなか伝えきれません。
動画|謎の防風ドアと闇に消える列車
防風自動ドアが開いてからのホームの様子を動画に収めました。
亜空間への入口!不気味なモグラ駅・美佐島|謎のドアと松代うさぎ列車が闇に消えるまで
鉄壁の防風扉を持つモグラ駅・美佐島。
三大モグラ駅の中では、一番小さな地下空間に、一番物々しい仕掛けが待っていました。
【2026年10月訪問】
番外編・青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅
三大モグラ駅を巡ったところで、もう一つご紹介したい駅があるんですよね。
日本三大モグラ駅には含まれていないですが、青森県外ヶ浜町の青函トンネル記念館には、さらに深い地下へ向かう鉄道があります。
※開館期間4月中旬~11月上旬
その名も「青函トンネル竜飛斜坑線」。
地上の青函トンネル記念館駅と、海面下140mの体験坑道駅を結ぶケーブルカーです。
もぐら号で海面下140mへ

オレンジ色の車体が印象的な「もぐら号」。
この可愛らしいマークがついたケーブルカーで全長778mの斜坑を、およそ7分かけて下っていきます。

急勾配の線路が、ずっと地下へ続いています。
地底への果てしない線路。
そしてその横を2247段の階段が続く。
ここはもともと青函トンネル建設時に、作業員や資材などを運ぶために使われた斜坑です。
青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅

そして到着したのが体験坑道駅。

「この地点は海面下140m」
現地の案内板にも、はっきりと書かれています。
普通鉄道では土合駅が「日本一のモグラ駅」として知られていますが、ケーブルカーまで含めると、さらに深い場所に青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅があります。

地下の坑道には、青函トンネル建設に使われた設備や、当時の作業風景を伝える展示がありましたが、これ目にしたとき「この人何してんねん」って思ったら人形でした。(笑)
本州と北海道を海の下で結ぶ青函トンネルは、全長53.85km。
構想から長い年月をかけ、多くの人々の手によって完成した巨大な土木事業です。
地下の設備には、観光施設というだけではない、現役の青函トンネルを支える場所としての姿も残っています。


不思議な地下世界から「もぐら号」で戻り、大きな通風門が閉まると、何だか現世に戻ってきたような気分になりました。
ちなみに、この通風門が開いている間は駅構内に入れない仕組み。美佐島駅の防風扉と同じく、風圧への対策なんですね。
かつては、もっと深い場所に駅があった
実は、青函トンネルにはかつて「竜飛海底駅」と「吉岡海底駅」という二つの駅がありました。どちらも1988年の青函トンネル開業とともに設けられ、見学客が訪れることもできた海底駅です。
特に北海道側の吉岡海底駅は、海面下149.5m。現在の体験坑道駅よりも、さらに深い場所にありました。
しかし、北海道新幹線の開業に向けた工事などに伴い、両駅は2014年3月に廃止。
現在は「竜飛定点」「吉岡定点」と呼ばれる、非常時の避難などに備えた施設となっています。
ちなみに、青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅と旧・竜飛海底駅は、通路としてはつながっていますが別の駅です。
今も一般の人が訪れることのできるのは、このケーブルカーの体験坑道駅です。
【2015年10月訪問】
まとめ|日本で一番深い(低い)駅はどこ?日本一どころか世界一?
日本三大モグラ駅と、番外編の青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅。
それぞれを訪ねてみると、同じ地下駅でも、ずいぶん違った表情を見せてくれました。
・土合駅:地下約70m、462段の階段が続く日本一のモグラ駅。
・筒石駅:階段と通路が入り組む、モグラ迷路駅。
・美佐島駅:二重の頑丈な防風扉が守る、鉄壁の防風扉駅。
・青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅:海面下140mにある、日本一深い場所(日本一低い場所)の現役鉄道駅。
この体験坑道駅。実は日本一どころか、世界一深い(低い場所)にある鉄道駅でもあるのです。
普通鉄道では、土合駅が日本一のモグラ駅として知られています。
そして、ケーブルカーまで含めると、青函トンネル竜飛斜坑線・体験坑道駅が現存する日本の鉄道駅で一番深い、かつ一番低い場所にある駅でもあります。
深さを競うのも面白いですが、それぞれの駅が地下に造られた理由や、独特な構造を実際に見て歩くのも、モグラ駅探訪の楽しさです。
地上からは想像できない世界が、足元に広がっています。
もしどこか一つだけ訪れるとしたら、私は土合駅をおすすめします。
実際に自分の足で462段の階段を降りていく駅。これこそモグラ駅にふさわしい場所かなと思いました。


