熊本県宇土市、有明海に面する御輿来海岸。
潮が引くと、風と波によって描かれた三日月形の砂紋が姿を現します。夕陽に照らされた干潟の美しさで知られ、全国から多くのカメラマンが訪れる景勝地です。
私も夕暮れの絶景を期待して、この海岸を訪れました。
残念ながら、思い描いていたような美しい夕陽を見ることはできませんでした。
しかし日が沈み、辺りが暗くなった頃、雲の合間から月の光が差し込みます。
目の前に現れたのは、夕陽の名所として紹介される御輿来海岸とは少し違う、月光に照らされた静かな砂紋の風景でした。
御輿来海岸とは|有明海の干潟に現れる砂紋
御輿来海岸(おこしきかいがん)は、網田海岸(おうだかいがん)の別名で、熊本県宇土市の宇土半島北岸に位置する海岸で「日本の渚百選」と「日本の夕陽百選」にも選ばれている景勝地です。
干満差の大きい有明海では、潮が引くと広い干潟が現れます。その砂地に風と波がつくり出すのが、幾重にも重なる美しい三日月のような曲線です。
水が残った部分に光が反射することで、日中の青空ではブルー、薄暮には紫色、夕暮れにはオレンジ色、満月の夜には金色と、時間や天候によって異なる表情を見せます。
海岸を見下ろす高台には御輿来海岸展望所があり、有明海に広がる砂紋の全景を眺められます。
宇土市観光物産協会 御輿来海岸
※干潮時間、月齢、日の入り時刻が掲載されています。
宇土市公式 網田海岸一帯
夕陽の絶景を求めて
いつかは訪れたいと思っていた御輿来海岸に行くことができたのですが、絶景とは程遠い張り切った曇り空。(笑)

海岸では作業している方がいて、すれ違う時にお互い挨拶をしたのですが、そのまま少しお話しをしていたら、海岸や地元のことなどを伺うことができました。
生憎の曇り空で、この日の絶景は絶望的。
それでも満月なので、夜中に月が出れば、その風景も綺麗だと教えてくれ、さらに、展望所へ向かう道は細いから気をつけてね、とアドバイスまでいただきました。

潮が引いて砂にできた紋様を眺め、水辺の風景も夕陽が綺麗だったら一層映えたんだろうなと思いを馳せる。
景行天皇が御輿を止めたと伝わる名前の由来
「御輿来」という珍しい名前には、景行天皇にまつわる伝承が残されています。
宇土市の資料によると、景行天皇が熊襲を平定した帰り道、この一帯にあった風や波に洗われた珍しい大岩に目を留め、しばらく御輿を止めたことから「おこしき」と呼ばれるようになったと伝えられています。
現在では「美しい海岸に見入って御輿を止めた」という形で紹介されることも多いようです。
「御輿来」(おこしき)は、私は一見では読めませんでした。(笑)
展望所からの眺め

展望所に上がってみると一望でき、三日月形の砂紋がよくわかります。
有明海の向こうに、雲仙普賢岳が見えます。
夕陽は全く望めないので、夜中の月明かりに期待して出直しすることにしました。
夕陽の代わりに現れた月光の砂紋

夜中に出直してみると、月光を受けた干潟の水面が浮かび上がり、その間を縫うように砂紋の曲線が続いています。
夕暮れの温かな色とは違う、青白く静かな光景。深夜にもかかわらず、私のほかにも6組ほどが訪れていました。皆さん、この月光の砂紋を目当てに来たようです。

夕陽が見られなかった残念な気持ちはいつしか消えて、目の前の光景に見とれていました。
予定していた景色とは違っても、地元の方に教えていただいた先に別の絶景が現れました。
この日の月光に照らされた砂紋は、私にとって御輿来海岸を象徴する一枚となりました。
思い出:海岸で出会った地元の方と一袋の海苔
昼間、海岸で作業をしていた地元の方とお話しする機会がありましたが、海苔に関わる仕事をされているとのことでした。
旅先で地元の方と話すと、その場所が単なる撮影地ではなく、そこで暮らす人たちの日常の場所であることに気づかされます。
「遠くから来たんだね、せっかくだから海苔持ってくかい?」
わざわざ取りに戻ってくださるとのことで、海岸近くの建物まで一緒に歩いていきました。その方は建物の中へ入ると、ほどなくして透明なビニール袋に入った海苔を手に戻ってきました。
「ありがとうございます。家に帰ったら美味しくいただきます。」
私はそう言って、その方と別れて展望所に向かいました。
私にとっての御輿来海岸は、月夜の景色はもちろんですが、地元の方とお話しできたこと、海苔を頂いたこと、全てが合わさった素敵な思い出の地です。
【2022年12月訪問】


