狩宿の下馬桜
静岡県富士宮市、富士山の麓に立つ狩宿の下馬桜。
樹齢800年以上と伝わる日本最古級のヤマザクラで、国の特別天然記念物、日本五大桜の一つに数えられています。
これまでに二度訪れていますが、一度目は満開を少し過ぎた曇り空。二度目は、わずかに花を残していたものの、ほぼ散り終わったあとの曇り空でした。
満開にも青空にも、どうやらなかなかご縁がない桜です。(笑)
それでも、菜の花畑の向こうに広がる大きな枝、何本もの支柱に守られた古い幹、背後に残る井出家の屋敷、そして富士山。
花の盛りだけでは語れない風景が、ここには残っていました。
狩宿の下馬桜 基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
名称 | 狩宿の下馬桜(かりやどのげばざくら) ※文化財指定名称:狩宿の下馬ザクラ※別名に「頼朝下馬桜」「駒止桜・駒止めの桜」「駒繋桜」がある。 |
桜の種類 | ヤマザクラ |
| 推定樹齢 | 800年以上 |
オススメ度(5段階) | ★★★★ |
一言 | 富士山と菜の花に抱かれて立つ、源頼朝伝承の日本五大桜。 |
例年の見頃 | 3月下旬~4月上旬 |
撮影日 | 初回訪問 2016年4月上旬 最新訪問 2026年4月上旬 |
所在地 | 静岡県富士宮市狩宿98-1 |
アクセス | 新東名高速 ・新富士ICから約25分 東名高速 ・富士ICから約30分 |
駐車場/トイレ | 駐車場有・トイレ有 |
| その他 | ・ライトアップ:無 ・国指定特別天然記念物 ・個人所有の桜です。マナーを守って鑑賞しましょう。 |
参考URL | 富士宮市 |

「下馬桜」の名に残る源頼朝の伝承
建久4年(1193年)、源頼朝は富士山麓で大規模な巻狩りを行いました。
巻狩りとは、多くの人で山野を囲み、鹿やイノシシなどを追い込んで仕留める大規模な狩猟です。当時は武士の訓練や、御家人を統率する力を示す意味もありました。
狩宿の井出家は、その際に頼朝の本陣が置かれた場所と伝えられています。
「下馬桜」の名前については、頼朝がこの場所で馬から降りた、頼朝のもとを訪れた御家人が馬から降りた、あるいは頼朝が桜に馬をつないだなど、資料によって伝承に少し違いがあります。
また、馬をつないだという伝承から、「駒止めの桜」「駒繋桜」、頼朝にちなんだ「頼朝下馬桜」といった別名も残されています。
どの伝承が本来の姿だったのかは、今となっては確かめようがありません。
ただ、頼朝の巻狩りから800年以上が過ぎた現在も、馬を降りた、あるいは馬をつないだという一瞬の出来事が、一本の桜の名前として残り続けています。

狩宿の下馬桜は樹齢800年以上の日本五大桜
狩宿の下馬桜は、富士山南麓に生育するヤマザクラの古木です。
富士宮市では樹齢800年以上、日本最古級のヤマザクラとして紹介されており、福島県の三春滝桜、山梨県の山高神代桜、岐阜県の根尾谷淡墨桜、埼玉県の石戸蒲桜とともに、日本五大桜の一つに数えられています。
大正11年(1922年)に国の天然記念物に指定され、さらに昭和27年(1952年)には、特別天然記念物に指定されました。桜として特別天然記念物に指定されているのは、ここ狩宿の下馬桜と東京都大島町にある大島のサクラ株だけです。
文化庁の資料では、赤い若葉を出し、花は咲き始めの淡い紅色から、次第に白色へ変わるヤマザクラの一変形とされています。ソメイヨシノのように花だけで樹冠を埋めるのではなく、赤い若葉と白い花が一緒に現れるのが特徴です。
そのため、遠くから見ると赤褐色の葉が目立ち、時期によっては実際の花付き以上に「もう散ってしまったのでは」と感じることもあります。
私が二度目に訪れた時は目の錯覚ではなく、本当に散ってしまった後でしたが。

桜の背後に残る井出家の高麗門と長屋
狩宿の下馬桜のすぐそばには、井出家の高麗門と長屋が残されています。
井出家は鎌倉時代以降、この地域の有力者として活動した家です。戦国時代には武士として地域を治め、江戸時代になると狩宿村の名主を務めました。
現在残る「井出家高麗門及び長屋」は、平成7年(1995年)に富士宮市の指定文化財となっています。
茅葺きの長屋と門、その前に広がる菜の花畑、そして長い年月を重ねた一本桜。
狩宿の下馬桜は、桜だけを切り取って眺めるよりも、井出家の建物を含めた風景の中で見ることで、この場所に積み重なった時間を感じられるように思います。
二度訪れても満開に出会えない桜
満開の桜、青空、富士山、菜の花。
できることなら全部入りで撮りたいところですが、二度訪れて二度とも、なかなか注文どおりには出てきません。(笑)
桜を撮っていると、こういうことは珍しくありません。
どうやらこの桜は、私が近づく気配を感じると、少し早めに花を片づけてしまうようです。(笑)
満開には出会えていませんが、同じ一本の桜が見せる、二つの異なる春を残すことはできました。
そう考えれば、ご縁がないというより、少し変わったご縁のある桜なのかもしれません。
いや、いつか晴天の満開も見たいな。(笑)

