赤坂の薬師桜
山形県白鷹町の小高い場所に立つ「赤坂の薬師桜」。
推定樹齢約970年とされるエドヒガンですが、現在の姿は、大きな枝を四方へ広げる華やかな一本桜とは少し異なります。
火災によって幹を大きく損傷し、その後も長い年月を生きてきた古木です。
私が訪れたとき、花の美しさ以上に目に残ったのは、傷ついた太い幹と、それを支える何本もの支柱でした。
赤坂の薬師桜 基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
名称 | 赤坂の薬師桜(あかさかのやくしざくら) ※文化財指定名称:赤坂の薬師ザクラ別名は「舟つなぎの桜」「御薬師様の桜」。種まき桜としても親しまれてきた。 |
桜の種類 | エドヒガン |
| 推定樹齢 | 970年 |
オススメ度(5段階) | ★★★ |
一言 | 火災で大きく傷つきながら、今も古株から花を咲かせる桜 |
例年の見頃 | 4月中旬~4月下旬 |
撮影日 | 2022年4月下旬 |
所在地 | 山形県西置賜郡白鷹町大字箕和田1071 |
アクセス | 東北中央道 ・南陽高畠ICから約40分 ・山形上山ICから約45分 フラワー長井線四季の郷駅より 徒歩約15分 |
駐車場/トイレ | 駐車場無・トイレ無 |
| その他 | ・ライトアップ:無 ・県指定天然記念物 ・個人所有の桜です。マナーを守って鑑賞しましょう。 |
参考URL | やまがたへの旅 |
火災を乗り越えて花を咲かせる古木
まず目に入るのが大きく傷んだ幹です。
山形県の資料によると、昭和初期に付近の工場で火災があり、桜も半焼しました。現在見られる幹の大きな損傷は、その火災によるものとされています。
幹は低い位置から曲がりながら枝分かれしていますが、その一部はすでに失われています。現在、主に花を咲かせているのは、残された幹から伸びる枝です。
その枝も複数の支柱によって支えられています。
また、大きな古株からは新しい枝が伸び、現在も花を咲かせています。傷ついた古木と若い枝が同居する姿には、長い年月を生きてきた桜ならではの趣があります。

満開の花を大きく広げる桜というより、傷ついた古い幹から懸命に枝を伸ばし、静かに花を咲かせている姿が印象に残りました。
千年近い時間を生きていれば、穏やかな春ばかりではなかったはずです。
火災に遭い、枝を失い、人の手によって支えられながら、それでも春になると花を咲かせる。
樹齢の長さに見合うだけの重ねてきた苦労を、少し垣間見たような気がしました。

桜の足元には、当地に生まれ、元禄の頃に江戸へ出て芭蕉の流れをくむ俳諧を学んだとされる俳人・無路庵東潮の句碑があります。「鼠尾草の一本分けやはしつぼね」と刻まれており、古桜の風景に静かな趣を添えています。
赤坂の薬師桜を訪れて
赤坂の薬師ザクラは、桜の花だけを目的に訪れると、少し寂しく感じるかもしれません。
枝の多くを失い、残された枝も支柱で支えられています。
しかし、この桜の魅力は、花の数や樹形の美しさだけではありません。
火災に遭い、大きな幹を失いながらも、千年近い時を生き、今も春になると花を咲かせていること。
その姿を前にすると、古木の樹齢とは、単に長く生きた年数ではないのだと思わされます。
長い時間を経過しても頑張っている。
派手さはありませんが、その姿を静かに見届けたくなる桜でした。

