樽見の大桜
兵庫県養父市の山あいに立つ「樽見の大桜」は、推定樹齢千年と伝わるエドヒガンです。
長い歴史の中で一時は花や葉がほとんど見られなくなり、枯死寸前とまでいわれた時期もありましたが、樹木医や地元の人々による長年の治療によって見事に復活しました。
他の桜ではあまり見ない独特の鉄製の支柱に囲まれながら咲く姿は、自然の生命力だけでなく、この桜を未来へ残そうとした人々の思いも伝えてくれます。
樽見の大桜 基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
名称 | 樽見の大桜(たるみのおおざくら) ※文化財指定名称:樽見の大ザクラ |
桜の種類 | エドヒガン |
| 推定樹齢 | 1,000年 |
オススメ度(5段階) | ★★★★★ |
一言 | 駐車場から徒歩で400m(約20分)山に入ります。 |
例年の見頃 | 4月上旬~4月中旬 |
撮影日 | 初回訪問 2011年4月下旬 最新訪問 2023年3月下旬 |
所在地 | 兵庫県養父市大屋町樽見 |
アクセス | 北近畿豊岡道 ・養父ICから約15分 |
駐車場/トイレ | 駐車場有・トイレ有 |
| その他 | ・ライトアップ:無 |
参考URL | やぶ市観光協会 |
山道を登った先に現れる千年桜

標高350mに佇む桜へは、駐車場から400m山道を歩いて向かいます。
桜見物に来たはずが、最初に待っているのは少しばかりの山登りです。仙桜は、そう簡単には姿を見せてくれません。(笑)

途中にはかつての桑畑に築かれた石垣が残り、この山で養蚕が営まれていた時代の面影を見ることができます。
見上げると奥に大きな桜の姿が見えます。あれが樽見の大桜です。

やがて視界が開けると、大きく枝を広げた樽見の大桜が姿を現します。樹高13.8メートル、幹回り6.3メートル。兵庫県下最大のエドヒガンで、支える支柱の大きさも類を見ないものとなっていました。

元禄年間には出石藩主の小出英安も花見に訪れたと伝わります。
さらに1823年、出石藩の儒学者・桜井石門がこの桜を訪れ、「仙桜」と名付けました。
枯死寸前から花を取り戻した仙桜
樽見の大桜は、昭和40年代から幹や枝の枯れが目立つようになりました。周囲の杉を伐採して日当たりを改善したものの衰退は止まらず、平成初期には花や葉がほとんどなくなり、樹木医から「ガイコツのようだった」と表現されるほどの状態になります。
1997年から本格的な治療が始まりました。空洞化した幹と枝を支柱で支え、土壌改良や灌水、枯れ枝の除去を実施。なかでも樹勢回復の大きな力となったのが、幹の内部から伸びた「不定根」です。細い根をミズゴケで包み、乾燥から守りながら何年もかけて地面まで育てました。やがて不定根は、傷んだ幹を補って養分を枝へ運ぶ新しい通り道となり、花の量も増えていきました。
鉄製の支柱は、最初は少々無粋にも見えます。しかし、その経緯を知ると、これも樽見の大桜が生き延びてきた姿の一部に思えてきます。


2011年に撮影したもの。
この頃には樹勢回復の取り組みが実を結び、枝いっぱいに花を咲かせていました。

満開の姿は、山中に突然現れた白い雲のようでもあり、現世離れした名がよく似合います。

この2枚は、2011年にフィルムで撮影したものです。
デジタル写真とは少し異なる柔らかな描写も、山中に佇む老桜の雰囲気によく似合っていました。

2011年に訪れた時、桜を見て駐車場に戻ると氷ノ山のブナの森に住む妖精という養父市のイメージキャラクター「やっぷー」も出迎えてくれました。千年桜がある山なので、妖精がいても不思議ではないですよね。(笑)
千年桜というと、自然の力だけで長い年月を生きてきたように思ってしまいます。しかし、樽見の大桜の現在の姿は、桜自身の生命力と、長年にわたり守り続けてきた人々の手があってこそのものです。
2011年から12年後、2023年に再び訪れた際も、変わらず鉄製の支柱に守られながら、山の斜面いっぱいに花を咲かせていました。一度は枯死寸前まで衰えた桜が、今もこれだけの花を見せてくれる。それだけで、山道を登って会いに行く価値は十分にあります。



